米アラスカ州とロシア極東地方は、日本市場をめぐって競合関係にある[東京都江東区の豊洲市場で売られているイクラ=2019年3月26日](C)時事

 2022年2月24日にロシアがウクライナへの全面軍事侵攻を開始して以降、対ロシア制裁の急先鋒となっているのが、米国である。ただ、同国の対応を見ていると、ロシアの侵略を罰する「正義」と、自国の経済的利害を守る「実益」とを、上手く両立させているということを感じる。本稿で取り上げるロシア産水産物の輸入問題は、その典型例と言えそうだ。

米国は即禁輸、日本は輸入継続

 ロシア・ウクライナ戦争勃発後、ロシア産水産物の輸入をめぐり、米国と日本の対応はくっきりと分かれた。米バイデン政権は、早々にロシア産水産物の輸入禁止を決めた。それに対し、日本は輸入継続を選択した。

 水産物は、日本の伝統的な対ロシア輸入品目の一つであり、ウクライナ危機を受けた日本政府の対応が注目された。結局、日本では2022年4月20日に、ロシアから輸入する水産物等に適用していたWTO(世界貿易機関)協定にもとづく関税についての便益(優遇税率)を撤回する関税暫定措置法の一部を改正する法律が成立した。これに伴い、ロシアから輸入する水産物の関税率が引き上げられた。

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