ロシアのプーチン大統領が十月二十九日から十一月一日まで、欧州連合(EU)との定期首脳会議のためパリを訪問した。EU・ロシア定期首脳会議は毎年、行われているが、今年の最大の焦点はEU議長国であるフランスのシラク大統領との顔合わせだった。 プーチン大統領は今年五月に就任したが、その前月には早々と訪英してブレア首相と会談し、六月にはイタリア、ドイツなどを歴訪し、積極的な対欧州外交を展開してきた。ただフランスだけは訪問せず、シラク大統領の招待を無視し続けた。チェチェン紛争でロシアの武力行使が人権侵害を引き起こしていると、フランス政府が欧州各国のなかでひときわ声高に非難していることへの意趣返しだった。 七月の九州・沖縄サミットでは、今度はシラク大統領がプーチン大統領の個別会談の申し出を断わった。サミット期間中、二人は握手をせず、饗宴ではグラスを合わすことも避けた。そんな両国にとって、定期首脳会議は互いに面子をつぶさずに、こじれた関係を解きほぐす格好の機会でもあった。 会談でシラク大統領は「武力行使はチェチェン紛争の解決につながらない」と持論を繰り返した。ロシア側も、EUとの共同宣言に「チェチェン紛争を政治的に解決することの必要性と緊急性で一致した」との文言を入れることに同意した。しかしそのあと行われた共同記者会見で、プーチン大統領は「政治的解決は探らねばならないが、テロリスト、原理主義者とは交渉しない」と述べ、ロシアの従来からの立場は不変であることを明らかにした。

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