金融再編劇に独り残った野村證券に、米系有力投資銀行モルガン・スタンレーとの接近が噂されている。モルガン・スタンレーといえば、ゴールドマン・サックスと並び称される投資銀行の雄で、現在、「ブッシュ政権に最も近い金融会社」(米系投資銀行関係者)と言われている。 クリントン米前政権とウォール街の連携は九〇年代の国際金融のメインテーマだった。それと比較すればブッシュ政権にはウォール街の影響力は小さいとの見方が一般的だ。それにもかかわらず、モルガン・スタンレーが注目されるのは、エール大学、ハーバード大学に学んだブッシュ氏が、経済政策スタッフをグレン・ハバードCEA委員長、ローレンス・リンゼー経済担当大統領補佐官といったハーバード人脈で固めたことに理由がある。WASP社会で“ホワイト・シュー(「いかにもアイビーリーグ的」の意)”と特別視されるモルガン・スタンレーは、ブッシュ政権と「人脈的に濃厚な関係をもっている」と、あるウォール街関係者は指摘する。 実はこの関連が今回の噂の土壌ともなっている。クリントン政権末期から、アメリカでは海外からの資本流入が細る傾向が鮮明化。しかし、それと同時発生した株価下落に明らかなように、資本流入はアメリカ経済にとって不可欠だ。その担い手は、ブッシュ政権下でもやはりジャパンマネー。「ジャパンマネーの吸収はクリントン政権以後、全く変わらないアメリカの重要課題」(米銀関係者)なのである。米国経済が日本の外貨準備、生保マネーと吸収してきたいま、最大のターゲットは「日本の個人金融資産」(米銀関係者)。しかし米系金融機関にとって日本の個人マネーを吸収することは容易ではない。旧山一證券の社員を大量採用し、証券リテイルマーケットにチャレンジしたメリルリンチの苦戦がそれを物語っている。

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