金正恩「亡命」で「核の傘」のほころび隠せ

執筆者:会田弘継2013年4月19日

 この未熟者の独裁者は、アメリカと戦争を始める気なのか? 外部からは、うかがい知れない。それが「困った現実だ」――。4月2日付米紙ワシントン・ポストの社説は嘆いた。ミサイル発射、核実験を繰り返す北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の言動を「正気の沙汰ではない」と形容するメディアもある。

「関与政策」を求める声も出ている。しかし、挑発に対し外交をもって応えれば、また挑発が繰り返されるだけではないか、とポスト紙社説は言う。金融制裁を強化せよ、非道の強制収容所の実態を世界に知らせよ、一層の制裁が必要だ、と社説は訴える。【Answering North Korea with financial sanctions, The Washington Post, April 2

 

楽観的シナリオも

  アメリカの「核の傘」は本当に役割を果たせるのか? 東アジアの懸念はそこにあると指摘するのは、オーストラリアの戦略専門家ヒュー・ホワイトだ。アメリカの「核の傘」(専門用語では「拡大抑止」と呼ぶ)の信頼性は、ひとえに北朝鮮の報復能力にかかっている。北がソウルに核攻撃をかけたら、アメリカは核で仕返しをするはずだ。同盟国・韓国に「核の傘」を保証しているからだ。しかし、そのアメリカの仕返しに対し、北朝鮮がホノルルやロサンゼルスを核ミサイルで報復攻撃できるとしたら……。北朝鮮側が、アメリカは自国の主要都市を犠牲にしてまで北に核攻撃を行なう意思はないだろうと考え出せば、「核の傘」は効かなくなる。だから、北の長距離弾道ミサイルは、東アジアの戦略地図を塗り替えることになるのだ、とホワイトはシンガポール紙ストレーツ・タイムズへの寄稿で言う。【Should South Korea build its own nukes?, The Straits Times, April 6

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