5月26日、安倍晋三首相を就任のあいさつに訪れた維新の党の松野頼久代表ら (C)時事 

 国内政治では、統一地方選と大阪都構想住民投票という今春の2大イベントが終わった。外交に目を向けると、安倍晋三首相の4月下旬からの訪米に合わせ、日米両政府は「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定に合意した。これらを踏まえ今後の政界の焦点は表のテーマとしては後半国会での安保関連法案へ、裏のテーマとしては野党再編へと移った。この2つのテーマに通底するのは、来年夏の参院選にどのように対応するのかという難題を、与野党がともに抱えていることである。

 

「開き直り」は禁物

 安倍首相は対中、対韓関係で毅然とした態度を崩さず、対米関係の改善に成功しつつある。内閣支持率も多くの世論調査で5割台を維持しており、絶好調で死角がないようにもみえる。だが、自民、公明両党が衆参両院で過半数を占め、安保法案の成立はほぼ確実な情勢であるにもかかわらず、実際にはこの法案をめぐって難しい課題を抱えている。
 まず、法案に対する国民の理解が進んでいない。各種世論調査によれば、安保法案に賛成する人は20~30%台にとどまり、反対する人は50%を超えている。これに関して、政府高官は記者団に次のように語っている。
「安保法制をよく分かっている人は少ない。かつての安保闘争の時も日米安保条約を実際に読んで反対していた人は少ない。今回も同じだ。経済と違って、安全保障は身近ではない」
 法案を理解している人が少ないから、世論調査における法案賛成者も少ないのだと言いたいのかもしれないが、これでは開き直りである。国民の理解が進んでいないのなら、理解してもらえるよう努力するのが法案を提出した政府と与党の責任だ。国会で過半数を握っているのだから、世論を敵に回してもかまわないと考えているのだとしたら、あとで手痛いしっぺ返しを喰うだろう。

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