サウジアラビアは1月2日に47名の囚人の死刑執行を発表した。その中に、東部州カティーフのアッワーミーヤを中心にした反政府運動の精神的な指導者となっていたニムル・バーキル・ニムル師が含まれていた。これに対してイランやイラクやレバノンで強硬な抗議行動が生じ、イランではテヘランのサウジ大使館に暴徒が乱入して破壊、放火し、マシュハドの領事館などにも群衆が押し寄せた。

これに対して翌1月3日にはサウジのジュベイル外相がイランとの外交関係を断絶すると発表。駐イランの外交官を引き上げるとともに、駐サウジのイランの外交官に48時間以内の退去を通告した。

当分の間、サウジとイランの激越な「舌戦」が続き、イラクやレバノンなどの末端で散発的に宗派コミュニティ間暴力が扇動されるだろうが、両国が直接軍事衝突するといった事態は考え難い。むしろそれを避けるための過激なレトリックであると言ってもいい。

外交使節を引き揚げるのは支障が大きいとはいえ、もともと両国は従来からイラクやレバノン、そして最近ではシリアやイエメンをめぐってかなりの緊張関係にあり、肝心なことはオマーンなど第三国で密かに話し合ってきた。

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