3月2日、参院予算委員会で答弁する安倍首相 (C)時事

 安倍晋三首相が3月2日の参院予算委員会で「私は在任中に(憲法改正を)成し遂げたい」と述べたことが大きな波紋を広げている。この発言によって、憲法改正問題は夏の参院選の重要な争点として浮上しつつある。
 だが、安倍首相は本当にそんなことを言ったのだろうか。こんな疑問が湧くのは、最近の自民党の姿勢を見ると、憲法改正問題を先送りしたいという意志がかなり明白だからだ。
 これに対して、野党は憲法改正を争点化したがっている。野党としては、安倍首相が国民の望んでもいない憲法改正を強力に推進しようとしているというレッテルを貼って参院選を有利に戦いたいところだ。

「改憲は自民党の党是」

 問題となった3月2日の安倍首相発言の詳細を振り返ってみたい。
 大塚耕平・民主党参院議員「総理は在任中に憲法改正をしたいとお考えでしょうか」
 安倍首相「自民党は今年で結党61年。結党当初から党是として憲法改正を掲げているわけでございまして、私は当然、自民党総裁であり、先の総選挙でも訴えていたわけですから、それを目指していきたいと考えています」
 大塚氏「もう1度うかがいます。在任中に憲法改正を成し遂げたいとお考えですか」
 安倍首相「まあ、しかし、憲法改正は衆院、参院のそれぞれで3分の2の多数がなければ発議できないわけでございまして、我が党だけで3分の2を獲得することはほぼ不可能に近いだろうと思っているわけでございまして、自民党だけでなく与党、さらに他の党の方々のご協力をいただかなければ、それは難しいだろうと、このように思っているわけでございます。私は在任中に成し遂げたいと考えておりますが、そういう状況がなければ、これは不可能であろうと、このように考えております」
 安倍首相独特の言い回しが文脈を分かりにくくしているが、その発言を要約すると以下のようになる。
 在任中であろうがなかろうが、自民党が憲法改正を目指すのは、党是なのだから当然である。だから、私も目指す。しかし、自民党一党では議席数が足りず不可能なので、他党の協力を求めている――。
 マスコミが報じているように、たしかに安倍首相は「在任中に成し遂げたい」と述べてはいるものの、在任中の憲法改正に強い決意を示したというよりも自民党総裁として当然のことを言ったまでで、むしろ発言の力点は、他党の協力がなければ憲法を改正できないと言っているところにある。

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