サウジのファーリハ新石油相の発言を読む

執筆者:池内恵2016年6月5日

6月2日にウィーンで行われたOPEC総会で、予想通り、生産調整(増産凍結、生産枠の変更、生産据え置き、生産目標の再設定、等々日本語では様々な表現が用いられるが)に関する合意はなされなかった

予想されたことであるため、石油市場もそれほど大きく反応しなかった。

サウジは現行の水準での凍結を主張している。イランが経済制裁解除後に、制裁前の水準に戻すことを目指すと公言しており現状の生産の水準で据え置くことには同意しないだろう。

ただし「現状の水準」は変わっていき、変わるたびにそれをサウジも追認している。イランは増産をするといっても、本当に施設が稼働して積み出しを始めるまでには時間がかかる模様でもある。政治・外交的な表面上の対立は激しいが、実際に実施しうる石油政策では両国にそれほど隔たりはない。

おそらく、公式の会議結果よりも注目されたのは、1995年以来20年以上サウジの石油相の地位にいたナイーミーの後任として5月7日に任命されたばかりの、ハーリド・ファーリハ石油相の、石油相になってから初めての大きな国際舞台での発言だろう。サウジ・アラムコのCEOを2009年から務め、2015年からは会長となっているファーリハはウィーンで、ムハンマド副皇太子の新経済プランの目玉であるサウジ・アラムコの株式部分公開後も石油生産余力は維持される、と発言し広く報道された

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