現在の中東情勢で最も関心を集めるのが、トルコの内政・外交の行方だろう。エルドアン政権は内政では8月7日に、7・15クーデタの阻止を祝うイスタンブルでの集会で数百万人を集めて大衆動員の力を誇示したが、外交では8月9日のエルドアン大統領のロシア・サンクトペテルブルク訪問によるプーチン大統領との会談どこまで対露接近に踏み切るかが注目の的である。

7月15日のクーデタ未遂に際して、ロシアは全面的にエルドアン大統領支持の姿勢を示し、それに対してエルドアン大統領も露骨に対露歩み寄りの姿勢を見せている。

クーデタ前の6月末にエルドアン大統領は、昨年11月24日のシリア・トルコ国境でのロシア軍機撃墜についてロシア兵の家族に謝罪するなど、対露での妥協に転換しかけていた。クーデタ後に一気に対露接近を進めているが、これがどこまで行くのか、注目が集まる

ロシア側は、トルコがロシア機撃墜の責任を認めて謝罪し、賠償し、責任者を処罰することを求めており、「ロシア兵の家族への謝罪と賠償」という形で妥協した後は、「処罰」という問題が残っていた。

これをクーデタを機会に、ロシア機を撃墜した戦闘機パイロットを拘束し、あたかもギュレン派が対露強硬策を行っていたかのような印象を醸し出して、どさくさ紛れにロシア側の要求を実質上呑むなど、すべてが強引なエルドアン流である。

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