シリア分割論がやはり出てきた

執筆者:池内恵2016年9月14日

ロシアがアサド政権の支援を揺るがす姿勢を見せず、米国がクルド人勢力のユーフラテス河以東での活動に支援を与え、トルコがアレッポ北方に一定の勢力範囲を確保した現在、中・長期的にはシリア内戦のある種の均衡点が見通せる地点に来ている。この均衡点は「一つのシリア」を名目的なものにし、実態上は連邦制に近い、「複数からなる一つのシリア」を現地の勢力の均衡と国際的な合意で作っていく作業である。

このような段階では、現実になるかどうかは別にして、思考実験として、「シリアを分割せよ」という議論が出るのは当然だろう。ウォール・ストリート・ジャーナル紙では、コラムニストのブレット・スティーブンスが、「ただ一つのシリアの解決策」として、シリア分割論を論じている。シリアの分割(partition)こそが、すべてを解決するわけではないが、解決の一歩であるとするこの論説は、1990年代のバルカン半島・旧ユーゴスラビアの紛争の決着の仕方を手本にしている。

Bret Stephens, "The Only Syrian Solution," The Wall Street Journal, September 5, 2016.

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