モデレーターとして、質問シートに書き込まれた質問を、講演と講演の間の短い時間に50枚ばかり急いで目を通し、分類して整理し、とりまとめて私の言葉でコメントにまとめ、各講演者への質問としたのだが、感心したのは、質問の質である。これまでは中東関連の講演会やセミナー・シンポジウムの質問というと「わたしゃね、思うんですがね、やっぱり中東問題の根元はパレスチナ問題ですよ。これについてあなたたちはどう考えるのか!」といった演説というか説教というか、どんなテーマをどんな方法で論じてもお構い無しで、長口舌を振るう質問者がいて閉口したものだが、そういうものがほとんどなかった。さすがに私が関わるイベントで「すべての根元はサイクス=ピコ協定」などと口走る(この場合は質問シートなので「筆を走らせる」か)人はいなくなった。おそらくよそのイベントでは未だにそういった議論がなされているのだろうが、それには関知しない。

従来の型にはまった議論に変わり、激変する中東諸国の内政上の課題について、そして各国の内政の変化に関与・干渉してくる地域大国・域外大国などを含む国際政治の構図と問題点について、かなり焦点を絞った、少なくとも「当たらずとも遠からず」の質問が多く出るようになった。

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