当選の正当性にも、大統領としての資質にも疑問符がつくのか (c)EPA=時事

 ロシアはトランプ氏を当選させるため米大統領選に向けて、サイバー攻撃を敢行した――。
 17の米情報機関で構成されるインテリジェンス・コミュニティ(IC)が出した、こんな分析結果をめぐって、トランプ氏がICとの対立を深めている。
 実は、次期米大統領は政権移行期間中に毎朝、現職大統領と同じ内容の「大統領日報(PDB)」に関する説明を国家情報長官(DNI)事務所の分析官から、聞くことになっている。しかし、トランプ氏はこれを拒否し、週1回だけしか聞いていないことが明らかになった。PDBは、ICを束ねるDNI事務所が大統領のために最新の世界情勢をまとめて毎日行う極秘報告のことである。
 トランプ氏がこんな形で情報機関と対立する理由は何か。両者間の異常な関係の裏に、複雑な戦略的問題が隠されているようだ。

トランプ当選を謀る秘密工作

 本欄でも今年7月以降、再三ロシアの対米サイバー攻撃問題について伝えてきた。
 米情報機関が公式に、事件について発表したのは10月7日。DNIと国土安全保障長官による連名の声明だった。この声明は「ICは米国の個人および機関のeメールを窃取・公開したのはロシア政府だと確信している。こうした活動を許可できるのはロシア最高権力者のみと信じる」と、初めてプーチン大統領の関与の可能性に言及した。
 大統領選挙後の12月9日付ワシントン・ポスト紙はさらに踏み込んだ分析結果を伝えた。米中央情報局(CIA)の「秘密評価」によると、「ロシアはトランプ氏の勝利を助けるため2016年大統領選挙に介入した」というのだ。匿名の米政府高官は、CIAだけでなくIC全体のコンセンサスとして「トランプ氏を当選させるのがロシアの目的と評価した」とも同紙に語ったという。
 さらに、後追い報道したニューヨーク・タイムズ紙は「ロシアは選挙戦終盤に、クリントン候補が当選する可能性を損ね、トランプ候補の可能性を高める秘密工作を行った」、あるいは「ICはこうしたハッキング工作を監督したロシア軍情報機関、参謀本部情報総局(GRU)高官の名前を割り出した」などと新しい情報を伝えた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。