1月27日にトランプ大統領がテロ対策を目的として署名した大統領令で、難民受け入れプログラムの120日間停止、シリアからの難民の受け入れは無期限に停止、さらに難民のみならずイラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの7カ国の国籍を持つ者への入国の停止を打ち出したことで、多大な波紋が広がる。7カ国の国籍保持者への入国の停止に関しては、米国のグリーンカード(永住権)保持者にも「ケース・バイ・ケース」厳しい入国審査が課せられ、それらの国の国籍と別の国の国籍を保有する二重国籍者にも入国禁止は適用される、といったかなり強硬な適用基準も示されており、波紋混乱は長期化するだろう。

しかし事前には、入国禁止措置と同時に命令されると報じられていた、シリア内部に「安全地帯」を設定してそこに難民を止めるという、難民受け入れ禁止への「代替策」については、直前に大統領令の文面から削除されたようだ【大統領令の文面】。

「安全地帯」構想はシリア内戦や難民問題への対処策としてトルコが主張してきたものであり、米国は二の足を踏んでいた。もし米国が主導して「安全地帯」を設定するのであれば、アサド政権やロシアとの軍事対決も辞さないという覚悟や準備が必要である。シリア内戦そのものには、難民や7カ国国籍保持者の入国拒否よりも影響が大きい。

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