ティラーソン訪露を注視する

執筆者:池内恵2017年4月11日

4月11日に米ティラーソン国務長官が、予定通りに訪露する。予定ではラブロフ外相と会談する。プーチン大統領との会談は予定されていないという。4月6日の米トランプ大統領によるシリア空爆の決定・実施が、米国の対シリア政策をどの程度変えるものなのか、ロシアとの関係をどのように持っていくのか、ロシアの反応はどうなのか、注目が集まる。トランプ政権の陣容が固まる中で、当初存在感の薄さが指摘されていたティラーソン国務長官が、このシリア空爆の前後から、安全保障政策の面でも前面に出るようになったことも注目に値する

トランプ政権による空爆はシュアイラートの一つの軍用基地のみを対象にした、きわめて限定的なものであり、それが単発で終われば、シリア内戦の状況をほとんど変えるものではなく、対シリア政策も変わらない。言い換えれば、トランプ政権が、それまでのアサド政権容認の姿勢を転じて、政権転覆を決断したのでなければ(それは中東からロシアの橋頭堡を奪うことに等しい)、それほど大きな転換ではない米政権内の発言は必ずしも統一されていないが、ティラーソンは対シリア軍事作戦の基本が変わっていない事を明言している。

そのことをロシアも十分に理解していることが、ティラーソン訪露がそれまでの予定通りに行われることからも推測される。

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