従来の政治家とは異質だが……(C)AFP=時事

 

 1年前、フランス大統領選がこんな展開になると、誰が予想しただろうか。

 エマニュエル・マクロンの政治運動「前進!」が発足したのは、昨年の4月6日だった。その頃、マクロンはまだオランド政権の経済相を務めており、大統領選への立候補も定かではなかった。大統領選は、現職のフランソワ・オランドと、右派の公認候補最有力と目されていた元首相のアラン・ジュペ、それに右翼「国民戦線」のマリーヌ・ルペンの3人を軸に進む、というのが常識的な予想だった。

 4月23日の第1回投票まで間近となった現在、その見通しは大きく外れ、39歳のマクロンが大統領に最も近い地位につけている。番狂わせ(すでにこうなったのが番狂わせなのだが)がない限り、国民戦線党首マリーヌ・ルペンとともに第1回投票を勝ち残り、決選でルペンを破って当選しそうな勢いである。

 その全体情勢は、渡邊啓貴・東京外国語大学教授の本欄論考「にわかに過熱した『マクロン人気』:混沌とするフランス大統領選挙」(2017年3月31日付)に譲るとして、ここではマクロン急浮上の理由と、それを助けた環境について考えてみたい。

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