6月21日の新皇太子任命にまつわる一連の施策では、皇太子と同年代で、初代国王からの世代としては一世代格下の第4世代の王子たちを、内務省と王宮府(4月にここにもテロ対策機関が設置され内務省から権限の一部を移した)に集めたこと、また将来の皇太子任命では国王と同一家系から任命しないことを約して権限の恒久的独占への警戒を解こうとしている様子が見られることをこれまでに分析してきた。

一般市民(臣民)の慰撫を目的とすると見られるのが勅令270号(英訳)で、昨年9月に行われた公務員の給与削減を全面撤回するものとなった。

サウジは国民の労働人口の3分の2が公共セクターの公務員とされており、公共セクターの給与と手当が政府支出の45%を占め1280億ドルに及ぶ(2015年)とされる。市民の雇用をほとんど国が丸抱えし、往往にしてほとんど働かないサウジ国民に、実態としては福祉の一貫で給料を支払ってきた。これは多大な非効率と成長の阻害の要因となっていると見られているが、ここを切ると国民の政府への支持が失われると危惧され、手をつけるのはタブーとなってきた。

ムハンマド皇太子は、副皇太子の立場で経済改革を打ち上げる際に、ここに踏み込むと宣言し、昨年9月27日に公務員の賞与や手当ての削減、大臣の給与や手当ての削減を発表し、それが経済そして社会にどのような影響を与えるか、注目を集めた。

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