ウクライナ国営の機械製造企業「ユジマシ」。ミサイルエンジンはここから流出したか (C)AFP=時事

 

 北朝鮮が核・ミサイル技術の向上で急激に脅威の度を高めることを可能にしたのは何か。米情報機関や欧米の専門家らが指摘する新事実や分析を読み解き、インテリジェンス面からこうしたナゾの解明を進める必要がある。状況認識の前に議論が先行する日本では、特に冷静な分析を要するだろう。

 実は、この2年間、北朝鮮の核・ミサイル技術と戦略に大きな変化が見られる。まず、その変化の実相を分析していきたい。

核戦争のシミュレーション

 米インテリジェンス・コミュニティ(IC)の総合評価をまとめた「世界の脅威評価」年次報告書の「北朝鮮」に関する記述内容は今年度版で大きく変わった。

 前年2016年度版はわずか9行で、内政の説明が中心だったが、ダニエル・コーツ国家情報長官が5月11日付で公表した2017年度版は3倍の27行にわたって、大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成までの期間短縮、ミサイル搭載核弾頭の小型化などの脅威について記述。その中で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が、潜水艦や移動式発射台からのミサイル発射を視察したことに注目、「核兵器を使用する戦争シナリオのシミュレーションをしているようだ」との驚くべき分析を明らかにした。

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