イギリスを中心とする世界的な金本位制の確立

執筆者:野口悠紀雄2017年10月5日
(C)AFP=時事

 

 ナポレオン戦争終結(1815年)から第1次大戦勃発(1914年)までの約1世紀は、イギリスの黄金時代だった。これは、ビクトリア女王の治世(1837年~1901年)とほぼ重なる。

 イギリスは、産業革命を世界に先駆けて実現し、世界の工場となった。インドなど広大な植民地を地球上のさまざまな地点に保有し、もともとはスペインに対して言われた「日の沈むところのない帝国」は、イギリスのことになった。

 1846年の穀物法廃止などに現れているように、産業資本家の勢力が伸張し、自由貿易体制が整えられた。

 そして、安定した財政基盤を有していたため、イギリス帝国は絶頂期を迎え、イギリス経済が世界的なヘゲモニーを確立した(なお、この時代は、経済的に見てイギリスの黄金期であるばかりでなく、美術や文学などの芸術・文化面でも、イギリスの黄金期、爛熟期であった)。

 通貨制度の面から見ると、この時代は、イギリスを中心とした金本位制の時代だ。

 フォーサイト連載の第5回で述べたように、ナポレオン戦争中の兌換停止を経て、1821年にイングランド銀行は兌換を再開 した。そして、1844年8月にピール銀行条例が成立した。

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