マネーの魔術史 (5)

英仏の戦費調達方式 どちらが合理的?

執筆者:野口悠紀雄 2017年6月29日
エリア: ヨーロッパ
(c)AFP=時事

 

 ナポレオン戦争は、膨大な戦費を必要とした。そして、イギリスとフランスの戦費調達方式は、対照的だった。この戦いは、両国の戦費調達方式の戦いでもあったのだ。

 ナポレオンは、国債を発行することなく、新紙幣を発行することもなく、戦費を税で賄った。税といっても、占領地からの徴収だ。征服したオーストリアとプロシアから巨額の賠償金を徴収し、フランス国外での戦費に充てた。富田『国債の歴史』によれば、1799年から1814年の間に占領地区で獲得した正貨は、約8億フランに上った。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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