『FT』上での論争(左がモース氏、右がマクナリー氏の寄稿、FTサイトより合成)

 

 ムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子(当時、現皇太子)が「サウジアラムコ」のIPO(新規株式公開)構想を初めて明らかにして以来(Transcript: Interview with Mohammad bin Salman, The Economist, Jan. 6, 2016)、疑問に思っていることがある。「サウジアラムコ」は、ニューヨークやロンドンなどの証券取引所が要求する「情報開示」をどこまで行うのだろうか、ということだ。

 特に保有確認埋蔵量、生産能力や物理的生産コスト(英エネルギー大手「BP」調査部門トップのスペンサー・デールの言う「社会コスト」は含まない。2018年1月23日「『欠乏から余剰』の原油価格を左右する『需要ピーク』と『社会コスト』」参照)などを、どこまで第三者の検証に委ねるのだろうか。

 そして、その結果判明するであろう「余剰生産能力」を、サウジ政府以外の株主がどこまで容認するのだろうか。

「余剰生産能力」とは、短期間に実現できて、相当の期間維持できる能力のことで、簡単に言えば、平常時には遊んでいる能力である。世界全体で急激な需要増とか予期せぬ供給阻害があったときに、価格の乱高下を鎮め、市場を安定化するために使用可能な能力だ。

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