3月初頭から、サウジアラビアのムハンマド皇太子が、「グランド・ツアー」とも形容したくなるような、大規模な外遊に出ている。

お忍びで国交のないイスラエルのテルアビブにいた、といったまことしやかな噂も以前に流れたムハンマド皇太子だが、公式の外遊は、昨年6月21日の皇太子就任以来初めてである。

3月4日−7日のエジプト訪問、3月7日−19日の訪英に続き、3月19日−22日の訪米で、外遊を締めくくる予定だった。しかし3月19日、ムハンマド皇太子の米国到着に際し、米国のサウジ大使館は、新たな日程を発表した。新しい日程によれば、ムハンマド皇太子は大幅に米国滞在日程を延長し、3月30日に西海岸に向かい、4月7日にテキサス州ヒューストンのアラムコ研究施設を訪問し、そこから帰国するという。3週間を超える長期間の米国滞在である。

多分にイメージ戦略・広報外交としての側面もあるムハンマド皇太子の外遊は、おそらくPR会社にふんだんにコミッションを払って派手に報じられているが、成果の実態は、報道が落ち着いた後に、改めてじっくり検討してみる必要がある。

ムハンマド皇太子のグランド・ツアーの間の3月13日に、ティラーソン国務長官が解任されている。サウジの対カタール断交でも、即座にツイッターでサウジを全面支持してみせたトランプ大統領と、慎重に中立姿勢を示したティラーソン国務長官・国務省の姿勢は、対照的だった。ティラーソン氏の解任が、米国の対カタール政策、さらには対イラン政策をどう変えるかが、ムハンマド皇太子の訪米をきっかけに様々に出て来た情報を読み解く際の、1つの注目点である。

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