互いの政治生命を賭けた応酬が繰り広げられた(C)EPA=時事

 

 さて、連立政権がギリギリのところで瓦解を免れた合意とは一体どのようなものか。

 合意の核が「トランジット・センター」を経て最終的に落ち着いた「トランジット手続き」にあることは本稿(上)で触れた。

 その「トランジット手続き」に拠れば、ドイツ・オーストリア国境のロッタルオスト、ヴァルサーベルク、キーファースフェルデンの3カ所で、次のような対応がなされる。

 なお、「手続き」の対象は「EUの第三国で難民申請を行った者」である。ここでは、当初議論されていた「EUの第三国で難民登録を行った者」は対象となっていない。

「難民登録済みの者」については、「入国後に拘束された場合」、「アンカー・センター」に収容され、「迅速な手続き」の下で「3、4日のうちに送還が決定される」とだけ規定された。

「難民申請済みの者」は、その者が難民申請を行った国とドイツとが予め引き渡し協定を締結してあるか否かに分けられ、「引き渡し協定がある場合」はその国に直接引き渡され、「ない場合」は国境で退去を命じられる。「引き渡し」は通常のケースでは2カ月以内に、引き渡し先の国が引き渡しに応じるか否かを回答することとなっているが、事前に引き渡し協定があればこの期間は大きく短縮される。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。