図1:強制不妊に関する新聞報道数
日経テレコンを用いて「強制不妊」という単語を含む記事を検索した。岸友紀子氏作成。
 

 強制不妊を巡る議論が世間の関心を集めている。

 きっかけは、今年2月13日に『ワセダクロニクル』が始めたシリーズ「強制不妊」だ。8月28日現在、26回の記事が配信された。

根拠は「優生学」

 強制不妊とは知的障害者や精神障害者を対象に、本人の同意がないまま不妊手術を行うことだ。1948年に施行された優生保護法に基づき、始まった。当初、強制不妊手術の対象は精神や身体の遺伝性疾患を有する人だったが、施行4年後には、対象は遺伝性疾患以外にも拡張された。1996年に母体保護法に改正されるまでに、少なくとも1万6475人が施術を受けさせられた。

 対象は国家が選択した。施術を行うにあたり、都道府県の審査会が「適当」と判断すれば、本人の同意は必須ではなかった。本人の意向を無視した手術も少なくなかった。

 このことは以前から世界の注目を集めていた。1998年11月には、国連の市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)委員会(当時)が、「委員会は、障害を持つ女性の強制不妊の廃止を認識する一方、法律が強制不妊の対象となった人達の補償を受ける権利を規定していないことを遺憾に思い、必要な法的措置がとられることを勧告する」という声明を発表している。

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