医療崩壊 (15)

「政府」「医師会」「メディア」の無知と沈黙が引き起こした「強制不妊」

執筆者:上昌広 2018年9月10日
タグ: 国連 ドイツ 日本
図1:強制不妊に関する新聞報道数
日経テレコンを用いて「強制不妊」という単語を含む記事を検索した。岸友紀子氏作成。
 

 強制不妊を巡る議論が世間の関心を集めている。

 きっかけは、今年2月13日に『ワセダクロニクル』が始めたシリーズ「強制不妊」だ。8月28日現在、26回の記事が配信された。

根拠は「優生学」

 強制不妊とは知的障害者や精神障害者を対象に、本人の同意がないまま不妊手術を行うことだ。1948年に施行された優生保護法に基づき、始まった。当初、強制不妊手術の対象は精神や身体の遺伝性疾患を有する人だったが、施行4年後には、対象は遺伝性疾患以外にも拡張された。1996年に母体保護法に改正されるまでに、少なくとも1万6475人が施術を受けさせられた。

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執筆者プロフィール
上昌広(かみまさひろ) 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。
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