メディアを利用した宣伝戦略か(『ブルームバーグ』サイトより)

 

 東京時間10月6日(土)未明に掲載された『フィナンシャル・タイムズ』(FT)の米産業・エネルギー部門担当記者エド・クルックスによる「Saudi crown prince says Opec working to keep oil prices down」を読んでいたら、サウジアラビア(以下サウジ)のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が『ブルームバーグ』とのインタビューで、アメリカからの価格引き下げ要請に応えるべく、ロシアらと共に増産している、という発言に加え、「サウジアラムコ」のIPO(株式公開)を2020年後半か2021年に行うと語った、と記載していた。びっくりして、FTの記事から該当記事に飛んで、読んでみた。

 この『ブルームバーグ』の記事は、池内恵先生が指摘しているサウジのメディア・コントロール(2018年8月7日【特別対談】池内恵×岩瀬昇:中東「いまを知る」決定版(2)参照)そのものではないか、というのが率直な読後感だ。

 ムハンマド皇太子が当該記事中で述べている「噂」とは、広範な情報開示を要求する海外取引所に上場することは、埋蔵量数値など国家機密情報を公開することになるので、国家弱体化につながる、またニューヨークに上場すると、2016年に成立した「テロ支援者制裁法=JASTA(Justice Against Sponsors of Terrorism Act)により、「9.11同時多発テロ」の責任があるとしてサウジ政府、すなわち「サウジアラムコ」が提訴されるリスクがあることなどを理由として、サルマーン国王が「IPO中止を決定した」(『ロイター』2018年8月28日「Exclusive : Saudi king tipped the scale against Aramco IPO plans」 )というものである(本欄2018年9月27日「『サウジアラムコ』IPOは『後まわし』という『実質中止宣言』」参照)。

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