ファーウェイの孟晩舟CFO(写真)は釈放されたが、逮捕劇を巡る闇は深い (C)AFP=時事

 

 中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)がカナダ・バンクーバーの空港で米司法当局の依頼を受けたカナダ当局に逮捕された事件、米国の捜査関係者の間では「アル・カポネ戦略」と呼ばれる手法だった。

 日本的に言えば「別件逮捕」だが、この戦略はそれ以上の意味を持つ。かつて犯罪組織を近代化したと言われるこの「暗黒街の顔役」を拘束するため、連邦捜査局(FBI)はいくつもの方法を探ったが、結局は「脱税」で年貢を納めさせたということだ。

 ファーウェイの場合も、米情報当局、FBIなどは10年以上も監視し、特にサイバー関係で違法行為の証拠を掴めないかと懸命な捜査をしてきたが、最終的に孟CFOを逮捕した罪名は「銀行詐欺(bank fraud)」だった。その裏には想定外の劇的な展開があった。

 12月1日の逮捕当日、ドナルド・トランプ米大統領はブエノスアイレスで中国の習近平国家主席との首脳会談に臨んでいた。対中国戦略の司令塔、ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は事前に逮捕の計画を聞いていたが、大統領には知らせなかった。大統領には言えない理由があった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。