神話と「凡人」の物語:井上雄彦『SLAM DUNK』
2018年12月28日
1990年秋、『SLAM DUNK(スラムダンク)』(井上雄彦)の連載が『週刊少年ジャンプ』(集英社)で始まった。最初の数回を読んで、高校3年生だった私はウンザリした気分になった。
「ああ、また、打ち切り必至のバスケマンガが始まったな……」
鬼門だった「バスケマンガ」
私は、小学校から大学まで「バスケ小僧」で、小学校に上がる前から『リングにかけろ』(車田正美)に夢中の「ジャンプ少年」でもあった。当時、バスケットボールは打ち切りの山を築く鬼門のテーマだった。作者の井上もヒット後のインタビューで、編集部から同様の警告を受けたと語っていたと記憶する。
『スラムダンク』は過去の失敗作と同じコースに乗っていた。中途半端なラブコメ成分とヤンキーバトル要素、ダンクという派手な技をプレイアップするバスケシーン。陳腐なジャンプマンガの定型をなぞる新連載は、当時夢中になっていた米プロバスケ、NBAの面白さと比べて「問題外」に映った。
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