「NATOストラトコムCOE」は2014年7月にラトヴィアの首都リガで開設された(C)AFP=時事

 

 前回は、NATO(北大西洋条約機構)がラトヴィアに設置した情報戦研究機関「NATO戦略コミュニケーションセンター」(通称「NATOストラトコムCOE」)の活動と、情報が新たな「武器」へと変貌しつつある現状について紹介した。

 前回触れた「認識が『現実』をつくる」というNATOストラトコムCOEの警句(前回の小欄を参照)のとおり、情報は人々の認識に影響を与え、やがて現実の方を書き換えてしまう。

 それゆえに情報は21世紀の新たな「武器」となり、インターネットをはじめとする情報空間は、その「武器」が飛び交う主要な「戦場」とみなされるようになったのである。

 では、この「戦場」では、具体的にどのような戦いを繰り広げられているのだろうか。

 以下では「NATOストラトコムCOE」主催の国際シンポジウム「悪意あるソーシャルメディア利用への対処」で報告された内容を紹介しながら、情報戦の最前線についてもう少し詳しく見ていこう。

「人間化」する「bot」

 情報の「武器化」という問題は広く認識されるようになっており、最近ではTwitter社がロシア政府との関連を疑わせる大量のアカウントを凍結したり、ウクライナ政府がロシアのSNSを遮断したりといった対策が取られるようになってきた(ちなみに筆者が参加した「NATOストラトコムCOE」のセミナーでは、「ロシアのSNSを使えなくなったウクライナ人ユーザーはどこへ流れたか」という発表もあったが、多くはFacebookなど西側のSNSに乗り換えたようだ)。

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