ロシアが公開した、くだんの新型ミサイル「9M729」(C)EPA=時事

 

 前回(米露「INF条約破棄」の「なぜ」と「どうなる」上 2019年2月12日)の小欄では、ロシアによるINF(中距離核戦力)全廃条約違反の現状とその背景について取り上げた。そこで今回は、この問題を米国側の視点から考えてみたい。

 米国が条約の履行停止という措置に踏み切った直接の要因がロシアの条約違反にあることに、疑いの余地はない。米国はロシアが2000年代半ばから条約違反の地上発射巡航ミサイル(GLCM)「9M729」の開発を行っていると見ており、2013年以降、ロシア政府に対してこの問題を提起してきた。

 にもかかわらず、ロシア側は条約違反など行っていないとして米国の主張を突っぱね、むしろ米国こそが様々な形で条約に違反していると逆反論を行うなど、両者の言い分は平行線を辿ってきた。

 この間にもロシアは9M729の配備を着々と進めていると見られ、すでに4個大隊がロシア各地に配備されている、とも報じられている。トランプ政権のINF条約脱退表明は、このような長い経緯の果てに浮上してきたものであった。

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