スーダン「バシル大統領失脚」の波及的意味

執筆者:篠田英朗2019年4月26日
バシル大統領辞任の一報が入り、スーダンのデモ隊は歓喜の声をあげたが (C)AFP=時事

 

 スーダンのオマル・アル・バシル大統領が軍事クーデターによって失脚した。アフリカ全域に影響を及ぼしかねない要素をはらんだ大事件である。

 すでにこの『フォーサイト』においても、白戸圭一氏が紹介している(クーデターに揺れる混迷「スーダン」民主化の「可能性」2019年4月19日)が、スーダンの内政事情は複雑である。バシル大統領は「独裁者」と評されることが多く、実際のところ30年にわたって国の最高権力者の地位にとどまり続けた人物だ。

 しかしスーダンの内政事情に精通した者から見れば、バシル大統領の地位は権力政治上のバランスによって成り立っていた。スーダン政府関係者の中には、バシル大統領よりも過激な者がおり、より穏健な者もいる。軍、治安部隊、党などに、それぞれの勢力が独自の基盤を持っていた。そのためバシル大統領が失脚した後、スーダンがどうなるのかについて、明確な展望を持っていた識者はいなかった。クーデターが起こってから10日余りがたつが、現時点においても、やはり同じように、国内政治情勢の行方は不透明なままだと言わざるを得ないだろう。

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