4月の水揚げがなかった阿部誠二さん。ホヤの未来を模索する=4月27日、石巻市鮫浦(筆者撮影、以下同)

 

 かつてない大型連休というのに、4月末の牡鹿半島の道には車もまばらだった。石巻市内から東南の海に突き出した半島は、東日本大震災の津波で全域の町や漁村が流され、人口は現在2500人弱(牡鹿総合支署管内)と、震災前から半減した。リアス式の大小の入り江に漁船の姿は戻ったが、漁港の改修や後背地の整備、防潮堤の建設は未完のまま。復興にはほど遠く、半島の旅は集落跡の更地、土とコンクリートの工事現場を巡る観がある。

 訪ねたのは鮫浦。2019年1月29日の拙稿『韓国「禁輸」石巻名物「ホヤ」復活を目指す「若手漁師」らの奮闘』に登場したホヤ養殖の漁師、阿部誠二さん(35)にその後の状況を聞くためだった。

 被災地である福島、宮城、岩手、青森を含む東日本8県産の水産物の輸入を全面禁止している韓国を相手取り、日本政府は2015年8月、「科学的根拠のない差別的な措置。自由貿易協定に違反する」と禁輸解除を求めてWTO(世界貿易機関)に提訴した。2011年の原発事故の後、8県の一部水産物の輸入を禁止した韓国は、2013年9月、汚染水流出問題を契機に全水産物に対象を広げた。1審に当たるWTOの小委員会は昨年2月、日本の言い分を認めて「必要以上に貿易制限的」とし、ホヤやサンマなど28魚種の禁輸撤廃を促した。だが、韓国が上訴。海でつながる環境で、汚染水処理や廃炉などの事故処理が終わらない隣国の現状に対する懸念を訴え、最終審である上級委員会が4月11日、日本を逆転敗訴とする判断を下した。

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