
ホヤの種苗を付ける原盤を積み込んで(筆者撮影、以下同)
「見下して煙突なき町の夕まぐれ ホヤは人間以前の香りする」
歌人の土屋文明が宮城県の三陸の町を訪ねた折、特産のホヤの味に太古の生き物を思い浮かべた――という58年前の歌だ(『青南集』所収)。文明は海のない群馬県の出身で、東京で暮らした人。その「未知なる珍味」というホヤの印象を、今も全国の消費者が抱いているのではないか。
そうした現状に、地元の生産者らは焦りを募らせている。大消費地の韓国が東京電力福島第1原子力発電所の事故後、東北など8県の水産物を輸入禁止にし、出荷の大半を担った宮城のホヤは販路を失って久しい。ホヤを知らない消費者に味をどう伝え、「うまい」と食べてもらえるか。若手の漁師たち、彼らを応援する料理店主ら、地元の熱い発信が始まっている。

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