米・イラン間の緊張が高まるペルシア湾岸情勢で、エスカレーションを進めかねないのが、米トランプ政権と一致して対イラン圧力を強めるサウジへの、イランの代理勢力とサウジが認識する勢力からの攻撃である。

5月14日にサウジ国営通信社が伝えた、ハーリド・アル・ファーレハ・エネルギー相の発言によると、サウジ東部の油田地帯から西部の紅海岸の港市ヤンブーへの送油施設に対してドローンによる攻撃が行われて、一時は送油の停止を余儀なくされる被害が出た模様である。首都リヤードの送油施設にもドローンの攻撃が行われたという。

イエメンの多くの部分を実効支配し、サウジ・UAEによる軍事介入を受けているフーシー派が攻撃の実行を認めている模様だ。

サウジがフーシー派による攻撃をイランの責に帰すことは常であるが、米イラン間の緊張という背景の下では、意図的な解釈次第で、これが重大な意味を持ちかねない。

気になるのは、サウジ紅海岸のヤンブーにはサウジを横断するパイプラインの出口があり、5月12日の船舶襲撃事件があったとされるフジャイラもまた、サウジやUAEの原油生産施設が集中するペルシア湾から、ホルムズ海峡を通らずに陸路の送油施設で原油を輸出する径路として、近年に開発されてきたことだ。サウジとUAEからすると、イランの影響力の拡大が著しいペルシア湾とホルムズ海峡を避けて、アラビア海や紅海に原油をより安全に輸送する施設の脆弱性を突かれていると感じてもおかしくない。

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