こじんまりとした「NATOストラトコムCOE」本部(筆者提供)

 

 前回の(中)(2019年1月17日)からかなり間が空いてしまったが、NATO(北大西洋条約機構)がラトヴィアの首都リガに設置した「NATO戦略コミュニケーションセンター(NATOストラトコムCOE)」訪問記の続きをお送りすることにしたい。

人口の25%がロシア系

 本題に入る前に、何故リガにNATOの研究所が置かれることになったのかを簡単に解説しておこう。

 その理由は、約192万人の人口中、実に25%をロシア系住民が占めるという特殊事情にある。ソ連時代にロシア系住民の入植が進んだ結果で、北の隣国であるエストニアでもやはりロシア系住民の割合は24%以上に達する(他方、リトアニアではロシア系住民の割合は6%)。このように大量のロシア系住民を抱えるだけに、ラトヴィアをはじめとするバルト3国は、ロシアによる「影響力作戦」には極めて敏感なのである。

 ここには歴史的な経緯も絡む。バルト3国は18世紀に相次いでロシア帝国に編入され、ロシア革命後の1918年に相次いで独立を果たした。だが、1939年の独ソ不可侵条約(別名「モロトフ=リッベントロープ協定」)と同時に合意された秘密付帯議定書に基づいて再びソ連に併合されてしまい、1991年のソ連崩壊まで独立を回復することができなかった。

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