サイバーウォー・クレムリン (24)

「対ロ情報戦」の最前線「NATOサイバー拠点」訪問記(下)

執筆者:小泉悠 2019年6月25日
エリア: ヨーロッパ
こじんまりとした「NATOストラトコムCOE」本部(筆者提供)

 

 前回の(中)(2019年1月17日)からかなり間が空いてしまったが、NATO(北大西洋条約機構)がラトヴィアの首都リガに設置した「NATO戦略コミュニケーションセンター(NATOストラトコムCOE)」訪問記の続きをお送りすることにしたい。

人口の25%がロシア系

 本題に入る前に、何故リガにNATOの研究所が置かれることになったのかを簡単に解説しておこう。

 その理由は、約192万人の人口中、実に25%をロシア系住民が占めるという特殊事情にある。ソ連時代にロシア系住民の入植が進んだ結果で、北の隣国であるエストニアでもやはりロシア系住民の割合は24%以上に達する(他方、リトアニアではロシア系住民の割合は6%)。このように大量のロシア系住民を抱えるだけに、ラトヴィアをはじめとするバルト3国は、ロシアによる「影響力作戦」には極めて敏感なのである。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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