【魂となり逢える日まで】シリーズ「東日本大震災」遺族の終わらぬ旅(6)
2019年6月30日

亡き子どもの魂を救うという地蔵たち。西光寺境内で祈り続ける(筆者撮影、以下同=2019年3月11日)
2011年3月11日の東日本大震災が起きた後の夏、福島県浜通りにある筆者の郷里の友人から、こんなうわさ話を聞いた。
「夜になると、海から “大勢の人”が浜の波打ち際に歩いてくるそうだ」
海岸部の津波犠牲者にまつわる幽霊話らしかったが、うわさはうわさで、その話の主が誰なのか分からず、実際に見たという人に会ったこともなく、うわさはすぐに立ち消えた。
「人を車ではねたと思ったら、誰もいなかった」
「店の求人を出しても、幽霊話のせいで人が集まらない」
「霊が後ろから追ってきて、『津波が来るから逃げろ』と言うそうだ」
「タクシーが客を乗せたら、消えていた」――。
シリーズで紹介してきた宮城県石巻市の遺族、鈴木由美子さん(50)らも耳にしたことのあるうわさのいくつかだ。どこの被災地でもあったであろう話が、津波で3600人余りが犠牲になった最大被災地の街では早くからニュースとして取材、発信され、ネット上でも怪談めかして語られた。それはいまだに続く。
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