本物の「プロフェッショナル」として活躍する左から坪倉正治医師、嶋田裕記医師(南相馬市立総合病院にて、筆者提供)
 

 前回、「プロフェッショナル」としての医師の在り方を解説した(2019年9月9日『医師が目指すべき「自立」した「プロフェッショナル」』)。

 今回は、「プロフェッショナル」となるための、医療現場での試行錯誤をご紹介しよう。

 まずは、「プロフェッショナル」のおさらいだ。前回の繰り返しになるが、私が重視する「プロフェッショナル」の要件は、顧客(医師の場合は患者)の利益を最大限に優先すること、顧客から報酬を受け取ること(医療の場合、健康保険が患者の代理人)、そして自己規律を持つことだ。要は組織のためではなく、顧客のために働くことだ。

 このようなことが可能なのは、「プロフェッショナル」は1人でも仕事ができるからだ。財産は頭の中の知識とスキル、さらにこれまでに培ってきたネットワークだけだ。どこでどのように働くかは自分で決めることができる。

 この点から見ると、勤務医や研究医は「プロフェッショナル」とは言いがたい。給与は病院や大学から貰い、勤務先は医局が決める。患者の利益より、組織の都合を優先することもでてくる。このような体質こそが、強制不妊手術、ハンセン病差別、さらに第2次世界大戦中の人体実験を引き起こした。

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