世界通貨の誕生は「悪」か?

執筆者:野口悠紀雄2019年10月10日

 

「仮想通貨『リブラ』が世界通貨になれば、国際的投機を助長する」という批判がある。

 しかし、投機が生じるような経済政策が行われていることこそが問題だ。「国際的資本移動を制約せよ」というのは、本末転倒の議論である。

投機が生じる条件があることこそ問題

『フィナンシャル・タイムズ』のラナ・フォルーハー は、「リブラが助長する投機」で、 「リブラが使われるようになれば、国際的な投機を助長する」としている。

 こうした危険があることは否定できない。

 国境を越える資金移動がより自由でより簡単になれば、さまざまな可能性が広がる。広がる可能性の中に、「投機が容易になる」ことが含まれるのは、間違いない。

 しかし、「投機が生じるのはなぜか?」ということを、まず考える必要がある。

 投機が生じるのは、リブラのためではない。政府や中央銀行が適切な政策を行っていないからだ。投機が利益を生み、投機が可能になるような条件を作っているからだ。

 そうした条件を放置してリブラを禁止したところで、国際的な投機がなくなるわけではない。

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