シリアにおけるトルコとクルドの「誤算」

執筆者:池内恵2019年10月22日

10月9日のトルコのシリア北東部への侵攻・越境作戦そのものの現状と背景については、10月6日のトランプの決定が米国の政治問題として騒がれているが故に、注目されていないきらいがあるが、これについては『フォーサイト』に「トルコ「シリア侵攻」エルドアン大統領の「トラウマ」と「打算」」を寄稿しているトルコ政治専門家の間寧氏が、アジア経済研究所のウェブサイトにもレポートを掲載されているので、こちらも参照されるとよいだろう。

間寧「トルコのシリア侵攻――誤算と打算」ジェトロ・アジア経済研究所

トルコとクルド勢力のそれぞれの目標・関心事と誤算の重なりによる事態の紛糾(そこには多分にオバマ政権期の米国の政策が関係しているが)、そして現地の軍事力に勝るトルコと、国際世論に強いクルド勢力の対比が顕著である。

シリアの現地の情勢に根ざしたこのような着実なレポートを踏まえ、米議会・国際世論のトランプ・バッシングの原因となっている、トランプ自身の弾劾問題、民主党との政争、クルド独立を支持しクルド迫害を非難することで協調する親イスラエル・ロビーや、ボルトン更迭、対イラン攻撃取りやめなどによってネオコン系の論客・シンクタンク・メディアがこぞって反トランプに転じた近年の事情の急変なども加味すると、全体像が見えてくるだろう。

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