「ブレグジット」後EUでのドイツの役割

『ドイツ・パワーの逆説 〈地経学〉時代の欧州統合』(一藝社)

執筆者:中村登志哉2019年12月2日
 

 英国が欧州連合(EU)を離脱した後、欧州はいったい、どんな姿を見せることになるのだろうか。意外に早く平穏を取り戻し、ドイツとフランスが協調する形で、英国抜きの欧州統合に向けた歩みを早めることになるのか。それとも、英国、ドイツ、フランスの3大国のバランスが崩れ、欧州統合の進展の速度を落としたり、英国に続くEUからの離脱国を出したりすることになるのだろうか――。

 欧州の今後を考える上で、フランスとともに、欧州一の政治・経済大国であるドイツの動向がカギを握るのは間違いない。

 欧州とドイツの関係に焦点を当てた研究書は多数出版されているが、なかでも広く読まれているのが、ハンス・クンドナニ著 『ドイツ・パワーの逆説 〈地経学〉時代の欧州統合』(一藝社、2019年)だ。

 同書は、原著がオックスフォード大学出版局から2015年に刊行されたが、翌2016年、中東からの大量難民が欧州に流入した「難民危機」への対応などを加筆した増補版が刊行される一方、ドイツ語等5カ国語に相次いで翻訳出版され、国際的に読者を獲得している。

『フィナンシャル・タイムズ』や『ウォール・ストリート・ジャーナル』等の世界の有力紙のほか、『フォーリン・アフェアーズ』等の有力学術誌でも書評に取り上げられ、今なお本書を取り巻く論争が続くなど、広く反響を呼んだものである。

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