加速する中央銀行の「仮想通貨発行」競争

執筆者:野口悠紀雄2019年12月19日

 欧州連合(EU)がデジタル通貨の検討を始める。デジタル人民元はこれより先行している。日本の通貨主権が中国に握られる危険は、決して杞憂ではない。

デジタルユーロの検討が始まる

 EUは、12月5日、欧州中央銀行(ECB)によるデジタル通貨の発行を検討すると発表した。「経済財政理事会」での協議の後、欧州委員会との共同声明の形で発表した(『朝日新聞』)。

 どのような仕様になるかなどの詳細は、まだ分からない。

 ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、12月2日、欧州議会でのスピーチで、中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入によって市民が日常の取引で中央銀行のマネーを使えるようになるだろうと語った。

 なお、フランス中央銀行は、2020年の第1四半期から、ユーロのデジタル通貨の試運転を行うと発表している。

 これは、小売り段階では使用しない「卸し型」のものだろうと考えられる。

 デジタルユーロの当面の目的は、明らかに、リブラ阻止だ。

 また、後述のように中国人民銀行が仮想通貨(デジタル人民元)の開発を加速化させていることへの対応でもある。

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