12月9日、ロシアの処遇に関して記者会見するWADAのリーディー会長(中央)ら (C)時事

 

 ドーピング問題で重大な不正行為があったとして、ロシアに対して向こう4年間、東京五輪を含めた主要な世界大会への参加を認めない厳罰処分を決めた世界反ドーピング機関(WADA)。

 ロシアのドーピング違反はどれほどひどい行為だったか。東京五輪を開催する日本だが、その事実はあまり知られていない。

 異例の厳罰処分に発展したロシアの犯罪的な行為は、5年前のソチ冬季五輪での想像を絶する事件に遡る。

 競技のあと、ドーピング検査で採取した尿を入れたボトルは保管室の壁に開けられた小穴から別室に移され、中身を入れ替えて、ロシア人選手の証拠を消していた。パフォーマンスを高めるステロイド系の薬品などで汚れたロシア人選手の尿は捨てられていた。

 これはロシア情報機関「連邦保安局」(FSB)の工作員を動員した組織的工作だった。

 それだけではない。ロシアの不正行為はその後も拡大した。ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)は2016年、WADAの本部をサイバー攻撃した。同年2月には、ロシア反ドーピング機関(RUSADA)の元幹部が2週間で2人不審死し、今もその原因は不明だ。

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