「プライバシーが守られる通貨」に惹かれた人々

執筆者:野口悠紀雄2019年12月26日

 いまから10年前、ビットコインのアイディアに何人かの人々が惹かれ、彼らの献身的努力で徐々に成長した。ピザを買うことにも成功した。現在の価格では、1枚77億円になる。

これはわずか10年前のこと

 ビットコインが誕生したのは2009年のことだ。まだ10年少し前のことでしかないのが、信じられない。

 この間に、何と多くが起こったことか。いまさらながらに驚く。ビットコイン誕生から何百年も経ってしまったような気がする。

 いま、中国という巨大な国家の中央銀行によって、デジタル通貨が発行されようとしている。それは、あらゆる取引をくまなく詳細に記録してしまう仕組みだ。国民は完全に管理される。 最初の開発者たちが夢見たのとは、正反対のことが生じようとしている。

 ビットコイン黎明期の牧歌的な様子は、ナサニエル・ポッパー『デジタル・ゴールド』(日本経済新聞出版社、2016年)に生き生きと描かれている。以下は、これを参考にしたものだ。

 2008年10月31日、専門家が読むメーリングリストに、サトシ・ナカモトと名乗る男が送ったメッセージからすべてが始まった。

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