令和元年が暮れ、いよいよオリンピックイヤー、2020年が迫ってきた。本コラムでも『SLAM DANK』(井上雄彦、集英社)以来、1年ぶりにスポーツマンガを取り上げたい。

柔道漫画の黄金期

 『帯をギュッとね!』(小学館、以下『帯ギュ』)は河合克敏の連載デビュー作にして代表作だ。『週刊少年サンデー』上の連載期間は1989年新年号から1995年まで。完結から20年以上の時を経てもストーリー、絵柄とも全く「古さ」を感じさせない時代を超えた傑作だ。

 80年代後半から90年代前半にかけては、『帯ギュ』のほかに『ビッグコミックスピリッツ』で浦沢直樹の『YAWARA!』(小学館)、『週刊ヤングマガジン』で小林まことの『柔道部物語』(講談社)が連載された柔道漫画の黄金期だった。リアルな柔道界でも、重厚な「山下時代」が終わり、ヤワラちゃんこと田村亮子(谷亮子)や古賀稔彦といった花のある新しいスターが脚光を浴びていた。

 この3作の中で私の一番のお気に入りは『帯ギュ』だ。『YAWARA!』と『柔道部物語』もマンガ喫茶で数回読んだ記憶があるが、『帯ギュ』は全巻手元に揃えて何度も読み返している。このコラムを書く際には改めて作品を通読するようにしているのだが、今回はその必要を感じなかった。セリフや細かいギャグもほぼ完璧に頭に入っているからだ。

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