資金逃避先となった「ビットコイン」

執筆者:野口悠紀雄2020年1月16日
リブラ公式HPより
 

 2013年のキプロス金融危機でビットコインが資金逃避先に使われて価格が高騰し、投機の対象となった。取引所が次々に作られ、ビットコインは当初の理想とはかけ離れた性格のものとなった。中国でも取引所が作られた。

キプロス金融危機で資金逃避に使われる

 ギリシャで2010年に起こった金融危機によって、地中海の島国キプロスの銀行が保有していたギリシャ国債が不良債権化した。このため、キプロスの銀行システムが崩壊寸前に陥った。

 EU(欧州連合)は、キプロスへの金融支援を行うこととした。ただし、その条件として、厳しい金融政策の実施をキプロス政府に課した。

 2013年3月中旬に、キプロス政府は、銀行預金に対して最大9.9%の課税をする預金税を実施すると発表した。

 これから逃れようと、多くの預金者が銀行や金融機関に殺到した。このため、現金を引き出せないという事態が生じた。

 キプロスは、欧州のタックスヘイブンのひとつであり、ロシアの富豪などの投資家がキプロスに資産を預けていた。

 キプロスで銀行の取り付け騒ぎが起きたとき、投資家たちの資金の逃避先となったのが、ビットコインだった。

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