破綻後には粉飾決算も発覚し、東京地検特捜部の家宅捜索も入った長銀本店(1999年6月)(C)時事
 

 前回(2020年1月11日『(6)公営か民営か』)は、昨年10月1日施行の改正水道法について触れた。将来的な水道事業民営化の可能性や必要性にも、正負の両面から言及したつもりだ。

 今回は、他の産業での事例にも目を向けながら、水道事業というものの本質へと深い考察を試みたい。

 前回までの話を簡単におさらいしておこう。

 こと上水道事業に関して言えば、水道局が保有する資産の約7割は水道配管だ。残る3割のうち、貯水池(貯水施設)と浄水場(浄水施設)が各々1割程度を占める。

 こうした重たい(比較的高額の)設備をひたすら(少ない従業員数で)維持・管理していくのが、水道局の仕事ということになる。

水道は設備集約型産業

 まず、「設備投資」にかかるコスト(会計用語で言うところの減価償却費)は、水道局の運営にかかる「人件費」の3倍以上であることに注目したい。

 こういった設備投資が大きい事業(産業全体)を、経済の世界では設備集約型産業(資本集約型産業)と呼ぶ。少し意外に思えるかもしれないが、コンピューターを動かすためのメモリやCPUを製造・販売する半導体産業なども設備集約型産業に分類される。それは、半導体を作って売るという事業では、ほとんどのコストはシリコンなどの原料コストや作業員、営業マンなどの人件費などではなく、実際には半導体製造設備(機械やプラント)への投資に使われているからだ。

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