ジョージアで最も有名なタマダの1人、ルアルサブ・トゴニゼ(右)とカタルーニャの醸造家。
「キリ」という名前の土器は、羊の形をした、頭がいくつもある器だが、下でつながっている。
飲み口がいくつもあるように見えて、実は一口で飲み干せるのだ。(筆者提供、以下同)

 

 前回はワインの母である「チャチャ」と、それを育む静謐なる空間「マラニ」について紹介した。

 今回もジョージア・ワインに関する2つのキーワードを覚えていただきたい。それは、ジョージア・ワインを嗜む上でもっとも重要な場である「スプラ」(宴)と、宴会マスターこと「タマダ」である。ワインの味はもちろんのこと、その飲み方もまた、ワインの故郷、ジョージアの粋と言える。

 ジョージアでは宴に招かれることが多い。「客は神からの贈りもの」という言葉もあるほど、ジョージアにはもてなし文化が根付いている。ジョージアを訪れると、自家製のワインと手作りの料理でもてなしてくれる。そのスプラは、何物にも代えがたい経験となる。

 もっともスプラは、何も特別な客をもてなすためだけのものではない。

 ジョージア人は様々な機会に、親しい友人達や家族とともに食事をする場を設けるが、その時にタマダという指導者を据えることで、スプラを唯一無二の場にするのだ。あるいは食事の場を「宴」に変えると言ってもよい。

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