中央銀行デジタル通貨とプライバシーの問題

執筆者:野口悠紀雄2020年3月26日
リブラ公式HPより
 

 中央銀行がデジタル通貨を発行すると、いくつかの大きな問題が起きる。

 前回までは、銀行システムに与える影響と、マネーストックを完全にコントロールすることの意味を述べた。もう1つ大きいのは、プライバシーの問題だ。

カウンターパーティ匿名性とサードパーティ匿名性

 国際決済銀行(BIS)は、中央銀行が発行する仮想通貨の問題を、2017年9月に発表した四半期報告で取り上げた。

 ここで、匿名性の問題が検討されている。

 まず、プライバシー問題は、カウンターパーティ匿名性(取引相手の匿名性)とサードパーティ匿名性(第三者への匿名性)に分けて考える必要があることが指摘される。

「カウンターパーティ匿名性」とは、通貨を送金した主体が、自分の真のアイデンティティを受取手に対して開示しなくてよいことだ。 

 これには、必要性を認める意見が多い。それがなければ、送金が行われた後で、情報を利用して盗みにいくというようなことになりかねないからだ。

「サードパーティ匿名性」も、必要だとする意見が多い。すべての取引について送金額や送金時点などが第三者に分かると、送金者の生活のさまざまな側面が分かってしまうからだ。

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