いまこそ「マネーの魔術」の本領を発揮できる

執筆者:野口悠紀雄2020年4月2日
リブラ公式HPより

 

 新型コロナ問題で連鎖倒産の危険がある。これに対して、市中にマネーを供給することが必要だ。大規模な納税猶予でそれができる。これこそ「マネーの魔術」といえるものだ。諸外国は、つぎつぎにそれを行っているが、日本政府は腰をあげない。

「マネーの呪い」:連鎖倒産のおそれ

 新型コロナウイルスの感染防止のため、行動や移動が制限され、企業や事業者の売り上げが激減している。

 雇用問題が深刻化するのは、時間の問題だ。自営業やフリーランサーでは、収入喪失が既に発生している。今後は、さらに問題が拡大するだろう。

 資金繰りがつかないと倒産する。すると、その取引先が債権を回収できず倒産する。こうして連鎖倒産が起こる。

 経済にマネーが不足するためにこうなる。

 これは、「流動性不足」と言われる現象だ。

 優良企業、つまり帳簿上は十分な利益を計上している企業や事業者であっても、手元に現金(マネー)がなければ倒産してしまうのだ。これは、「マネーの呪い」といってもよい現象だ。

 平時においては、「マネーの呪い」は、経済の一部では発生するにしても、経済全体の、しかも最重要の問題となることはない。そこで問題となるのは、生産性の問題であり、分配の公平の問題だ。

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