「マンデー大暴落」は日本の取引所にも衝撃を走らせた(C)時事
 

 筆者が「石油市場は『海図のない航海』へ漕ぎ出してしまった」との表現を初めて使ったのは、本欄『価格戦争「サウジvs.ロシア」本当の敵は「米シェール」という「仕組み」と「背景」』(2020年3月11日)でのことだった。

 ロシアが「OPEC(石油輸出国機構)プラス」を崩壊させ、サウジアラビアが「価格戦争」を開始し、「NYMEX」(New York Mercantile)のWTI(West Texas Intermediate)は、一時30ドル割れを記録していたころである。

 30ドル割れが一大事件だったのだ。

 当時、筆者の脳裏にあったのは、すでに大幅な供給過剰だった市場に、サウジが販売価格を大幅に引き下げ、一方で生産能力一杯の大増産を行うと、供給過剰は収拾のつかない規模に膨れ上がってしまうのではないか、という懸念であった。

 だが、「新型コロナウイルス」の蔓延による世界全体の石油需要の落ち込みは、まだ漠然とした不安でしかなかった。

 確かに中国経済は「停止」状態に追い込まれており、石油需要は当初予定より50万BD(バレル/日)ほど減少する、との予測が出てはいたが、まだ前年比50万BDほどの増加が見込まれていた。「新型コロナ」の世界への広がりもゆっくりとしたものであり、当該原稿を書いている段階では「WHO」(世界保健機関)もまだ「パンデミック」を宣言していなかった(宣言したのは3月11日)。

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